冬支度を始めた秋の自然風景
秋を代表する植物である薄、私は薄を見ると父の顔が浮かぶ。
父は寡黙で必要以外喋らないが・・・ なんてドラマのように表現したいところだが、
実際は親父ギャグをいつも炸裂させて家族全員が「おもしろくない事が可笑しくて笑う」。
おかげで我が家の食卓はいつも賑やかである。
そんな我が家は、秋になると決まって玄関の辺りに同じ植物が飾られる。
それは薄なのだが、誰が取ってくるのか、はたまた買ってくるのか定かではなかったので母に尋ねると、それは父が持ってきたという。
父が玄関に飾る、それも植物なんぞを持って帰ることが可笑しくて同時に、なぜ薄だけ?と疑問に思ったので食卓の小咄として父に尋ねた。
父は「子供の頃から薄が好きなんだ」ただそれだけ。
理由を尋ねるが本人も分からないらしい。ただ好きなものは好き。あの風にそよぐ姿が堪らないそうだ。
いつもの食卓に並ぶ親父ギャグを苦笑しながら、
この親父が「趣」だとか「風情」だとか、そんなものを感じる感性を持ち合わせているギャップに、なんだか衝撃を受けたのだ。
どうやら私の趣味である写真も、
この親父ギャグを連発する者から受け継いでいるのは確かなようだ。
秋の風情を感じられるこの心が、いつの日か親父ギャグに変わっても、
薄を持ち帰る親父のように、どこかで今のこの感性を持ち合わせていたい。